藪の眼には涙もでない

藪医者ヤブーのブログ 健康に関すること。独り言。 患者さんの話はフィクションです。

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メルマガ「日台共栄」より転載 私の歴史認識を大転換させた台湾との出合い(3)


私の歴史認識を大転換させた台湾との出合い(3)

               元高校教諭 石部 勝彦

◆台湾人による日本論

 この伊藤氏の書物は一気に読めるようなものではなく、私は少しずつ丁寧に読んでいたのだが、そんな時期にもう一つ、大変な書物に巡り合ったのであった。蔡焜燦氏の『台湾人と日本精神』である。

 その頃評判になっていたし、まさにこの時期であったので、私はすぐに買い求め、それこそ一気に読了した。大変に感動した。いや、衝撃を受けたと言ったほうが正しい。「戦前の日本は素晴らしい国であった」と言って下さっている。これは本当に驚きであった。私たちは、戦前の日本は悪い国であった、悪いことをした国であったと思い込まされてきた。いわゆる「戦後民主主義」に少しでも疑問の声をあげると、それなら戦前の日本に戻った方がよいのかと反撃され、そう言われると沈黙せざるをえない、こういうことが続いていたと思う。戦前の日本を肯定することは、いわばタブーになっていた
のである。

 蔡焜燦氏は元日本人であった台湾人である。そして日本人であったことを大変に誇りに思って下さっている。この書物の中で、台湾にとって戦前の日本という国が何であったかということを、現在の日本人に対して教えてくれているのだ。そして現在の日本人が、戦前の日本が素晴らしい国であったことを忘れてしまっただけではなく、逆に悪いことをした国であったと思い込んでいることに対して、心から悲しみ嘆いておられるのである。

 平成11年5月、台南市で後藤新平・新渡戸稲造の業績を称えるシンポジウムが開催された。蔡焜燦氏が司会を務められ、台湾側は経済界、学術界の要人が顔を揃え、日本側からも両氏の関係者などが多数参列したという。冒頭、昭和大学の黄昭堂名誉教授が、「帝国主義は当時の世界の潮流であり、日本だけが謝る必要はない」と機先を制したのだった。ところが、それでも日本の代表は、「日本による戦前の台湾統治は、善いこともしたが悪いこともしたであろう。そのことについて謝罪したい。」と口にしたのだという。蔡焜燦氏はそれをたしなめられたそうである。

 このシンポジウムの白眉は、実業家・許文龍氏のスピーチで、氏の綿密な歴史検証に基づく客観的な歴史観に会場は水を打ったように静まり返り、その見事な歴史分析に聞き入ったという。氏は「台湾の今日の経済発展は、日本時代のインフラ整備と教育の賜物です。当時搾取に専念したオランダやイギリスの植民地と違い、日本のそれは良心的な植民地政策だったのです」と明確に語ったのだ。

 このエピソードを紹介した後で、蔡焜燦氏は、日本が台湾に貢献した実例として、嘉南平野を緑の大地に変えた八田與一や七代総督明石元二郎の感動的な話を語られている。さらに氏は、日本の台湾統治の優れていたこととして、道路・鉄道・港湾・上下水道・ダム・灌漑施設などのインフラ、医療施設の充実などを指摘したが、その業績の中でとりわけ高く評価したいことは「教育」なのだそうだ。

 日本の教育水準は非常に高く、日本から派遣された教師たちが情熱を燃やしていた上に、何よりも愛情をもって台湾の子供たちに接してくれた。こうした素晴らしい教育が台湾全土に広まり、有為の人材が多数育っていったという。また道徳教育の素晴らしさも強調されている。日本は台湾人に「公」という観念を教え、正直、信用、勤勉、忠誠、勇敢などの大切さを教えてくれたのだという。そしてこの日本人に教えられたよき精神を、台湾人はまとめて「日本精神」と呼んでいるのだという。

 だが蔡焜燦氏は、戦前の日本人を称賛する反面、自虐史観にとらわれて自信と誇りを失っている現在の日本人について嘆く。そして、「日本」とは現在の日本人のものであるだけではなく、我々「元日本人」のものでもあるのだと言われ、日本が本来の姿に立ち戻ることを強く願っておられるのだ。

 私はこの蔡焜燦氏の著書を読み、感動し、衝撃を受け、そして粛然とした気持ちになった。同時に私は、探していたものがようやく見つかったという嬉しい気持が込み上げてくるのも感じたのである。ただ、氏が称賛しているのは戦前の日本であって現在の日本ではない。この点私も、忸怩たる気持ちを抑えることができない。

 この蔡焜燦氏の著書に推薦文を寄せておられたのが金美齢さんであった。金美齢さんについては、テレビでよくお見かけしていて、小気味のよい発言をされる台湾出身の方だとは存じ上げていたが、その著書はまだ読んでいなかった。そこで数冊買い求め急いで読むことになったのだが、はたして大変な感銘を受けることになった。蔡焜燦氏と殆んど同じことを言っておられる。

 特に印象深かったのは「日本精神」についてのお話であった。この言葉は現在の台湾でも広く使われていて、「日本精神を持っている」というのは大変な誉め言葉なのだそうだ。しかもこれは日本語世代の人々の間で使われるだけではなく、若者の間でも使われているのだという。「日本精神で行け」と言えば、それだけで意味が通じるのだそうだ。

 「日本」という単語がこのように使われる、これはすごいことなのではないだろうか。さらに、この言葉は日本人が教えたものではなく、台湾人の間で自然に生まれてきたものなのだという。この意味をよく考えなければならない。そうなるにはそれを裏付ける何ものかがあったに違いないのである。

 その頃また偶然が重なった。私の長男が慶応大学に入学したのだが、その年の三田祭で金美齢さんの講演が行われることを知ったのである。私は喜んで出かけていった。講演会は実に盛会で、内容も素晴らしいものであった。そしてその会場でビラをもらって、蔡焜燦氏が来日されていて早稲田大学で講演が計画されていることを知ったのである。無論、それも聴きに行った。

 こうして私は、この短い時期に、蔡焜燦氏と金美齢さんという日本を愛して下さる2人の台湾人のお話を直接拝聴することができたのである。私の興奮はいやがうえにも高まったのであった。台湾関係の書物を次々に読むことになったが、李登輝元総統の『台湾の主張』、黄文雄氏の『台湾は日本人がつくった』、小林よしのり氏の『台湾論』が出たのもこの頃のことであった。                    (つづく)


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