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ネロ −愛された小さな犬に−(「二十億光年の孤独」から)

                        谷川 俊太郎

ネロ
もうじき又夏がやってくる
お前の舌
おまえの眼
お前の昼寝姿が
今はっきりと僕の前によみがえる
お前はたった二回程夏を知っただけだった
僕はもう十八回の夏を知っている
そして今僕は自分のや又自分のでないいろいろの夏を思い出している
メゾンラフィットの夏
淀の夏
ウィリアムスバーグの夏
オランの夏
そして僕は考える
人間はいったいもう何回位の夏を知っているのだろうと

ネロ
もうじき又夏がやってくる
しかしそれはお前のいた夏ではない
又別の夏
全く別の夏なのだ

新しい夏がやってくる
そして新しいいろいろのことを僕は知ってゆく
美しいこと みにくいこと 僕を元気づけて くれるようなこと 僕をかなしくするようなこと
そして僕は質問する
いったい何だろう
いったい何故だろう
いったいどうするべきなのだろうと

ネロ
お前は死んだ
誰にも知れないようにひとりで遠くへ行って
お前の声
お前の感觸
お前の気持ちまでもが
今ははっきりと僕の前によみがえる

しかしネロ
もうじき又夏がやってくる
そして
僕はやっぱり歩いてゆくだろう
新しい夏をむかえ 秋をむかえ 冬をむかえ 春をむかえ 更に新しい夏を期待して
すべての新しいことを知るために
そして
すべての僕の質問に自ら答えるために

以上「二十億光年の孤独」から引用


 物心ついた時から私は何故か犬が好きである。

 生まれたときから家に「シバ」という名前の雑種犬がおり、犬を見慣れていたためかもしれない。
 また同時に三毛猫も飼っていたが、そいつを抱いて隣家の子供と遊んでいるときに大暴れされ、手に噛み傷と引っかき傷を付けられて以来、潜在的に猫に対する恐怖心が生じたのも関係しているのであろう。
 とにかく私の心の中では、犬が「忠実な友」になりうるという良き誤解が続いている。
 その「シバ」が死んだ後も、どこからか雑種の子犬を貰ってきては育てていた。
 2代目の「シバ」は、当時私がロケットや宇宙旅行に興味を持っていたために、段ボール箱に閉じ込められ、それを縄で縛られてぐるぐる回されるなど、宇宙旅行の実験台につき合わされるという苦しみを味わされたこともある。

 高校2年生の3学期から茨城県の高校に転校し、その後医科大学を卒業するまでの6年間はペットどころではなかった為か、犬遍歴の空白期間が続いた。
 しかし研修医の時代になると、どこからか野良犬を拾ってきてはまた飼い始めた。その犬はまだ結婚していなかった妻の家に預けられたが、残念ながらごく短期間で死んでしまった。
 その後結婚して原子力発電所で有名な東海村に赴任したが、公園に遊びに行った折に車の下に居た子犬を「いぬ太」と命名して可愛がっていた。いぬ太は抱いていた妻が誤って落下させたために、前腕部が折れてしまったが、獣医に手術をして貰い骨髄内に金属を入れて無事に走り回れるようなった。

 「いぬ太よ いぬ太 お前は
 何時になったら 走れるの
 ああ、三本足で、ピョコピョコタン
 駆け寄る姿が 哀しいね」 (「里の秋」のメロディーで)

 いぬ太が走れるようになるまで、私は上の様な替え歌を繰り返し歌っていた。

 やがて無事に回復した後のいぬ太の走力はたいしたもので、日曜日ごとに2,3時間は平気で私のランニングについてきた。

 その後大学に2年ほど生化学の研究に戻った間、いぬ太は両親の所に預けられ、残念ながらそこで死んでしまい、桜の木の根元で眠っている。
 
 その後桂村という所に赴任していた5年間は、子育てが忙しかったためか、また犬の空白期間が生じてしまった。

 現在の住居に引っ越した16年ほど前のある日、散歩をしていた私について来て、それ以来我が家に住み着いたのが「いぬ子」である。

 爾来馬鹿犬子は晴れの日も雨の日も、風の日も嵐の日も私たちとともにあり、私と家族の生活を見つめ支え続けてくれた。

 お前は疲れてへとへとになって帰っても黙って餌を待っており、私が仕事をしたくない日にもいつもと同じように馬鹿な顔をしてただ庭に寝そべっていた。

 ただそれだけを繰り返した15年。

 先月の12日午前0時、お前は私の腕の中で、家族に見守られて宇宙に逝ってしまった。
  
 もうじきお前の居ない夏がやって来る。

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【2008/06/03 22:39】 | ペット トラックバック(0) |
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 本日の当ヤブークリニックの主な感染症の傾向です。
1.感染性胃腸炎             3人
2.手足口病                1人
 
 だいたい以上のような感じだったと思います。
 溶連菌は急激に減った印象です。

 写真は手足口病の手に出来た皮疹です。
 手足口病はコクサッキーウイルスやエンテロウイルスが病因です。
 現在中国で多数の死者を出しているエンテロウイルス71の変異株が、日本に持ち込まれないことを祈ります。
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【2008/06/03 18:43】 | 感染症 トラックバック(0) |
20080603182636

 その昔、平塚雷鳥の年下の恋人が自分のことを「若いツバメ」に喩えて以来、女性の若い愛人のことを「若いツバメ」というようである。
 ヤブークリニックの軒下の子ツバメたちも、4羽の親たちの共同作業の甲斐あって、そろそろ旅立ちの日が近づいているようだ。
 今年は一羽も落下せずに、なかなか優秀なツバメたちである。


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【2008/06/03 18:26】 | 雑感 トラックバック(0) |