今日はヤブーの古くからの悪友が外来をしてくれる日だった。
大学二年位からの付き合いなので、彼此三十年の歳月が経つ。某エリート高校を卒業しスポーツマンだった彼と、田舎の三流校を卒業した青白い自称文学青年だったヤブーが、何で仲良くなったかはあまりよく覚えていない。
しかし二人はなぜか馬が合うところがあり、一緒にニーチェの話や文学の話をつまみに酒を飲んだ。学生時代はちょいとした馬鹿をやるものだから、お互いに墓場までもっていかなくてはならないこともあるかもしれない。
彼とは大学三年の春休みにヨーロッパを一月ばかり放浪した。最初の一週間はユースホステルや安宿を、重い荷物を運びながら探してとまる日々を繰り返した。
パリのピガーレという、東京で言えば歌舞伎町みたい町では、風呂なしのホテルのダブルベッドに二人で寝た。そのまちのある店では、「観るだけ五フラン」という甘い客引きの言葉にホルモンが高ぶって入り、シャンパンをポンポーンと抜かれたのに驚いて、命からがら逃げたこともある。
どんなに仲良くても共に生活すると疲れが出てお互いに厭になることもあり、その後ドイツのケルンで別れて別行動をとった。
それぞれ三週間ばかり勝手気儘にあのヨーロッパ大陸を移動していたはずなのに、ミュンヘンで一度そして帰る前々日にパリでもう一度すれ違った。
いま私はすっかり藪医者になり、彼の方は母校の大学で助教授として診療、研究、教育に忙しい立派な医者になっている。
それでも月に一度はこうして出会い、あの頃は自分達も言われていただろう子供の愚痴や、世の行く末を憂うる言葉を交わしている。それがお互いにちょうどよい距離かもしれない。
思えばヨーロッパ大陸も狭いが、この世も案外狭いのだ。
二人がよく読んだ「修身教授録」の著者「森信三」の言葉に、「人生遭うべき人には必ず会える。一瞬早からず。一瞬遅からず」なんていうのが有ったと記憶している。
そんな人に本当に出会えれば、人生は何とかなるのかもしれない。

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【2005/10/08 23:18】 | 雑感 トラックバック(0) |